10年、20年後を想像し、力の種を撒き芽を育む

校長挨拶

1989年の東西の壁の崩壊から始まった自由主義経済圏の地球規模化と、それと機を同じくするICT技術の発達で世界がフラット化*1したと言われています。それはグローバル化とボーダーレス化でもあります。
わずか4半世紀。世界の教育のあり様にも大きな変化が現れはじめました。

日本は、明治維新以来、自前の科学技術力を育成し躍進しました。二度の大戦を挟んで、紆余曲折を経ながらも科学技術や世界経済の発展に貢献してきました。それは、同時に独自の教育体系を作り上げることにもなりました。日本語で、自前の教科書で高い教育水準を維持してきました。
しかし、日本の教育の独自さはグローバル化の中でのアジア諸国の教育の発展とは対照的で、独自が故の国内での最適化、いわゆるガラパゴス化の進行という状況に陥ったとも言えます。
第二次大戦前の宗主国の影響を教育面でも強く受けてきたASEAN諸国では、グローバル化に対応する教育への改革に意欲的です。国づくりと直結した新しい教育政策を打ち立てています。
一方、日本は今、グローバル・スタンダードの基本としての英語教育*2をみるだけでも明らかですが、子どもたちに付けるべき未知の社会と多様性への対応力、問題解決力を育成する教育の在り方や方法論での遅れは深刻です。20年の開きがあるとまで言われています。真剣に取り組まなければならない重篤な状況にあります。

問題解決力とそれを支えるコミュニケーション力です。国を越える往来と滞在がもっと頻繁になり、個人の活動がより国際的環境になれば、英語力は言うまでもなくAIを使わない個人的なコミュニケーション力がますます公私で必要になります。2020年、世界の18歳から22歳までの若者の人口の半分が英語圏と中国語圏の人々となります。昔は識字力が人生の道を左右したように、英語運用力がそうするでしょう。
さらに、職場と職業の変化です。AIやロボット、RPAの浸透、通信技術のいっそうの発展で社会は間違いなく変わります。通常のオフィスでの業務さえも大きく変わります。私たちはそれを知っています。そうであれば学校の責任は、新たな変化に自立的に対応できる確かな力と、与えられた状況を切り拓く力を育成することです。新しい学力観は、知識の習得を否定するものではありませんが、習得のステージにとどまらない力を身に付けること、そして、その力の付け方を学ばせるところにあります。
2020年からの大学入試改革で求められることは、この考え方と軸を同じくします。そしてさらに、その大学選びさえも、将来展望のあり方によっては世界の中で考える*3ことも必要になるでしょう。それも普通とされる時代が到来します。

関東学院六浦は、金沢八景での満60年を経て、2014年から新しい教育環境を日々増進し、しっかりと整えてきています。これまでの経験では想像できないほど変化すると言われる未来に備えるためです。10年後、20年後を想像し、明日の教育を考える。10、20年後に備える力の種を撒き、芽を育てる。その教育と環境を用意しています。
ただし、教育の理念はキリスト教に基づく精神です。隣人愛を考え、人の弱さを謙虚に知る。それを知ることで逆に、やさしくてたくましい心が育つ。校訓は「人になれ 奉仕せよ」。学びの根底にあるものは、どの時代にも揺らいではいけない不易の精神です。変わらぬものを以て変わるべきものを見つめ、未来への力を付ける教育。六浦は、学びの道を未来へ繋がる道にする教育を展開しています。

校長 校長 黒畑 勝男

(2014年入職就任 2018年4月24日記)

*1:『フラット化する世界』トーマス・フリードマン著・伏見威蕃訳 日本経済新聞社 2006年
*2:小学校での英語教育の開始年では、韓国1997年、中国2001年、日本2011年
*3:「本校卒業後ハワイ州立大学機構のカピオラニ・コミュニティ・カレッジに進学、準学士修了後は帰国して関東学院大学に3年次編入」の進路設計が2019年度3月よりスタート(現高校3年より対象、進学条件あり)