校長のつぶやき(107)未来では、2025年を「令和の開国」の年と振り返る…


掲載日:2025.06.07

2025年は「令和の開国」の年と振り返られるのではないかと思うのです。

日本は…人口が縮小する日本の未来の安定化をじっくりと(?)考え、いやいや、意思決定が遅くて後追い的に結果的に、国内グローバル化を段階的に進めてきた。そしていよいよ最終ステージ…それが2025年だった、と振り返る気がします。

それはなぜか。ざっと眺めます。先ず2008年に唱えられた「留学生受け入れ30万人計画」。2019年に31万人で達成。その2019年に留学生の就労条件が緩和されました。出入国管理法の改正で、学業修了(卒業)後に国内就職での採用業種の壁が大きく撤廃されました。「中核(外国)人材」と呼ばれます。そして2023年、「高度外国人材」の在留資格の取得と一年期限のビザの更新が容易になりました。家族帯同も可能になりました。同じく2023年、11月には「特定技能1号・2号」のビザが創設されました。技能実習生制度での諸課題の解決に向け「育成就労制度」となりました。特定技能1号の資格者には5年の在留期限はありますが、転職も可能になるなど働く人としての権利が護られるようになりました。1号から2号への資格変更も努力次第で可能です。2号資格者は資格の更新は必要ですが、在留期限に上限は無くなり家族帯同が認められます。徐々に増えるでしょう。この時点で政府は「共生社会の実現を目指す」と宣言しました。その法的な土台が、中核人材、高度人材、特定技能人材で整えられてきたというわけです。

2024年6月の経済財政諮問会議では、新たに「留学生40万人計画」が掲げられました。そして2025年2月、「AIなど先端分野での人材を確保するため、文部科学省や東京大学などがインドからの留学生獲得を強化する」(2025/2/15日本経済新聞)で、インドのトップ大学のインド工科大学などから大学院生270人を招く計画が発表されました。一人年間300万円程度を支給するというプロジェクトでです。目的は、日本の研究力や産業競争力の向上のための理工系人材の確保と説明されています。28年度までに倍増するという企図もあり、社会に大きな変化が訪れることは想像に難くありません。

そして、「開国」と言える決定的な改正があります。2025年1月1日から全国一律で、「外国人起業活動促進事業」が施行されたことです。「スタートアップビザ」の発給が始まりました。2023年10月に24年度内で実施するとリリースされていました。起業家を呼び込むのための入管法の緩和です。日本で起業をめざす外国人向けの「起業ビザ」の許可が全国の自治体で可能になりました。起業に必要な資格要件の充足(準備)を2年間の滞在期間中に達成すればよいという在留資格の創設です。全国各地で外国の方々の起業と事業活動が容易になり、経済の活性化も期待できるわけです。すでに国内には「経営・管理」での滞在資格者が3万5千人。日本での暮らしに慣れている潜在的な人々に経済活性化をお手伝いして頂こうという入管法の改正です。

中核人材、高度人材、特定技能人材、そして起業家です。そして、留学生受け入れ倍増計画ですから、2025年が「令和の開国」と呼ばれるのではないかとということです。

ところで、インドの大学院生の招聘のニュースと対照的なニュースもあります。いま次の新しい学習指導要領の策定に向けて、中央教育審議会は基本方針について論じています。小学校段階から情報教育の体系化を図るべきだという議論が出た!というニュースです。イギリス、オーストラリア、台湾、韓国などは、小学校から情報教育を専門的に、プログラミングなども初歩から扱う教科が独立して設定されているのが世界の現実です。日本は台湾とほぼ同じ時期に情報教育をカリキュラム化することで動いていました。30年前です。で日本は、いま? 論議ですか? 圧倒的な後れでしょう。学校に教える人材をどのように確保しましょう? 何とも言えない絶望に近い国家政策としての不作為を感じます。人口減少で必要な措置とは言え、どんな社会になっていくのかと驚くばかりの入国管理法の緩和と、現場で切実に感じる必要な教育の後れ。きっと10年後は今までとはまた違った社会になると、具体的に考えるわけです。

11年前、六浦中・高に着任して以来、10年後、20年後の変化する社会を見据えて学びを考えましょう、何をどこで学ぶかを考えましょうと申し上げてきましたが、2025年以降はこの過去10年とは違う加速度で変わっていくのは間違いありません。どこを見つめて学びを計画するか・・・これがますます大事になっています。

<あとがき> 学校説明会、こんなトーンの校長挨拶。説明会が終わって、お話しをいろいろとしてくださるお父さん方が増えているのです。実感として仕事をされている方が増えているのだと感じます。