校長のつぶやき(80)生徒には、想像力と創造力を


掲載日:2023.07.14

校長のつぶやき(80)生徒には、想像力と創造力を

★この10年(関東学院に入職が2014年でした)の間、学校説明会で語ってきたことの中心は、日本の人口減少から否応なく求められるようになるグローバル化への対応力の養成です。しかし、それはそれとして、AIが想像を超えるスピードで発達する現在、グローバル化とは別の軸で、これからの時代にどのような力が必要なのか、学校は何を見つめながらどのような力を付けさせるべきなのか、という課題があらたに見えます。

★インターネットのYahoo! ニュースの中のFNNプライムオンライン(7/5(水) 0:02配信)で、生成AIがテーマのシンポジウムが東京大学で開催されたというニュースがありました。

★<…ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長やAIの専門家らが、「ChatGPT」など急速に活用が広がっている生成AIについて、日本で開発を行うことの重要性を強調した。その中で孫会長は、「(生成AIが今の)100万倍になるのが、たった10年かからずしてなる。僕は今断言できる。」…「生成AIは、将来的に論理的に答えられる質問は、何でも答えられる水晶玉みたいになる。あんまりちまちましたことを言っていると、あっという間に日本は取り残されてしまう。」…>

★これだけを読むと、開発競争の速さに取り残される危機感もさることながら、教師としては教育の意義やあり方を再考しなくてはならないと感じます。孫正義氏はすでに4年前、別の記事でも同様のことを語っていました。2019年4月2日にYahoo!に掲載されたインタビュー記事です。『いかがわしくあれ、新しい文化に立ちすくむな―ソフトバンクグループ会長兼社長 孫正義【平成から令和へ】― Yahoo! JAPAN』というタイトルで、その中で孫氏はすでに「コンピューティングの能力が約100万倍になれば、人間の頭が考えられる程度のロジックはすべてAI も考えられるようになる」と語っていました。また、「AIがどんどん人間の仕事をこなすようになっても、AIを道具として使って、AIとともに提案をしていくコミュニケーションの仕事が次々と誕生するはずです。」とも語っていました。

★この「AIとともに提案をしていくコミュニケーションの仕事が次々と誕生する」という指摘は、漠然としながらも誰もが納得するところでしょう。仮に、それが一つの新しい教育のあり方へのヒントだとすると何をすべきか。

★今、学びのあり方では、リベラルアーツの再考だとか「STEM」とか「STEAM」とかが盛んに言われていますが、どうしても何か特別な呼び方のあるカリキュラム・フレームの中で考えたくなるのが日本特有の癖です。たしかに、システマティックに新しい教育のコンテンツを考え準備することでの合理性はあります。しかし、これだけ生活と文化の多様化が進み、また一方で、多くの学校が新しい学習指導要領の下で、カチンコチンでギューギューでゆとりのない時間割が強いられている中で、生徒個々のレディネスや適性・関心は様々なのに、カリキュラムの中で生徒のそれらを十分に満たしていくのは難しいと思います。

★新しいことを生む力、イノベーションを進める力…それには「気づき」と「発見」が原動力です。日常で慣れ親しんでいる風景の当然と思っている状態の中でも新たな気づきが生まれることはあります。しかし、「非日常」は別格です。その人にとっての「非日常」の中での実際の体験や経験は新たな価値の創造のためのコミュニケーションを引き出します。本校が何故、海外留学を奨励しているのかの理由はここにあります。海外留学では、「非日常」の中で気づきや発見、再考が手っ取り早く提供され、少なくともその個人のそれまでの経験との格闘が生じます。その格闘こそが、想像力と創造力を引き出します。

★これまで私は色々な場面やお話しの中で、「生徒は未来からの留学生」と言ってきました。海外からの留学生は、暮らしてきた母国や今の自分に無いものを学び、習得して帰ります。AIの浸透する(近)未来の社会で暮らす子どもたちにとっては、そこに求められる「生きる力」の習得には、時間の軸では同じ現在(今)であっても、考え方や仕方、在り方の違う非日常世界の中での体験や格闘のような実際の生活経験が大きく役立ちます。未来からの留学生。未来に持って帰るのは想像力と創造力。その育成にも、留学という異文化体験が重要です。(人口減少と教育に関しては、『校長つぶやき』(78)をご参照ください)

・・・学校報告・・・

➔ 海外留学生徒の増加
2023年度7月現在で、いま留学中の生徒と留学予定で手続きに入っている生徒は52名(中3~高2生)。(中3から高2に在籍する生徒708人中の7.34%)

➔ アメリカの高等学校卒業資格取得プログラム(DDP)
昨年度から開設したデュアル・ディプロマ・プログラムには現在中3から高3の生徒13人が参加。このプログラムでは2年間週3日程度、on-lineでのアメリカの高校(PCD)からの通信講座を受講します。英語の4技能の力が確実に養われます。欧米カリキュラムでの大学教育に必要な英語での「授業参加力」「リサーチ力」「レポート力」を習得し海外大の学部入学が可能です。2年間の履修ですが、一年間の海外留学よりも費用的に低額です。