中学校・高等学校入学式を行いました


掲載日:2020.04.04

中学校・高等学校入学式を行いました

本日、中学校と高等学校の2020年度入学式を行いました。

新型コロナウイルスの影響により、通常の式典とは異なる形で実施しました。保護者の皆様にはマスクの着用や参列いただく人数の制限をお願いするなど、ご協力いただきました。ありがとうございました。

幸い天候に恵まれ、満開の桜の下、新入生のみなさんをお迎えし、入学をともに祝うことができました。
新入生のみなさんの学校生活が充実したものとなりますよう、教職員一同お祈り申し上げます。

以下、学校長の式辞を掲載いたします。

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皆さんは今日から、関東学院六浦の生徒です。皆さんの一人一人に、私たち関東学院六浦の教職員全員が、熱い気持ちで祝福の言葉を贈ります。入学、おめでとうございます。

ご挨拶を申しあげる前に、校長としてお詫びを申し上げなければなりません。

今、世界中が新型コロナウィルス感染症の拡散で大変な状況にあり、そして日本も、特に首都圏での感染の拡大が進んでいる状況です。そうした中にあるとは言え、新入生の皆さんやご家族にとって良い想い出になるはずの入学式をこうして縮小して簡略化して行わなければならないことを、教職員一同とても悲しく感じています。本当に残念で、申し訳ない気持ちでいっぱいです。

しかし、この状況は、人類の英知がいずれ終息させていくでしょう。そう考え、希望を強くもって未来を見たいと思います。私たちも、皆さんの生活の始まりに対していろいろ難しいことを経験しています。しかし焦らずに、皆さんの夢を見つめて、確かなスタートにしたいと思っています。

世界の指導者や政治家の中から、今の状況をたとえて戦争に向かっているようだ、戦時下と同じ状況だという声が聞こえます。そのたとえはある意味で分かります。しかし、個人の命の尊さについて何も言えない、主張できないまま強制的に戦場に駆り出されていくような戦争の時代を想像すると、大きな違いがあります。今はこうした今でも、私たちは希望を持てるのです。自分の未来を、焦らず冷静に眺めて、今日の日を歩み出したいと思います。

さて皆さん。皆さんは確かにここにいます。本校への入学の決意は、皆さんの個性そのものとして称えたいと思います。あらためて六浦の教職員の歓迎の気持ちを伝えます。

また、この日を迎えられましたご家族の皆様におかれましては、このような社会の状況ですが、新しい日々の始まりに感慨深く、ここにいらっしゃることと思います。心よりお祝いを申し上げたいと存じます。

今日は、皆さんが生きる社会の変化について考えたいと思います。そして、大きな変化の中で皆さんが進んで行く皆さんの将来に向け、今何を学ぶべきか、これからどんな力をつけるべきなのかということと、そのための勉強のあり方を考えることがとても大事であるということを伝えたいと思います。

説明会の中で必ずお話ししてきたことがあります。10、20年後の社会を想うことがとても大事だということです。

一つは科学技術の飛躍的発展です。
スマホが広く浸透し始めた12~3年前の社会にタイムスリップしているとしましょう。その時代の大人たちは今の時代を想像できたでしょうか。さらに遡ります。25年くらい前、皆さんがまだ生まれていなかった時代に行きます。固定電話の電話回線を使ったパソコンでインターネット、Yahooが一般家庭に徐々に浸透し始めた頃です。その時代の大人たちは今の時代を想像できたでしょうか。難しかったと思います。私もそうでした。Amazonや楽天のようにネット上での買い物が普及するとは多くの人は想像しませんでした。むしろ、そんなショッピングは成り立たないと否定的な意見を持つ人も少なくありませんでした。そして、世界の出来事を個人レベルで同時に知ることができるのも、現実ではありえませんでした。そんな社会が来るという想像も難しかった。

そして、今や新しい通信技術の5Gが現実になりました。AIやロボット、AIが様々なソフトを動かして仕事をこなすRPA(Robotic Process Automation)や、全てのものがインターネットで繋がって生活が大きく変わるIoT(Internet of Things)が浸透していきます。それらは間もなく一気に、加速度的に日常生活の中の普通になっていきます。日本の政府が唱えてきた「ソサエティー5.0」はもはや想像上ではなくなります。

原始の狩猟をしていた社会をSociety 1.0、農耕の社会をSociety 2.0。工業が進んだ社会がSociety 3.0、そして今の情報社会をSociety 4.0として、次の新たな社会がSociety 5.0です。高速大容量で時差のない通信技術5Gの普及によって、現実の生活の中の多くのものが時間的な遅れがなくネット上で繋がる。現実世界とサイバー空間が融合する社会に突入し始めます。

通信技術だけではなくAIも著しく進歩します。2045年頃は、AIが自分自身で人間より賢い知能を生み出すことができるようになる時代とも言われています。したがって、これまでの社会が経験しなかった次元の違う大きな変化が訪れます。皆さんは、まさにその時代に生きるのです。

その時代には、人としての豊かな創造性が求められるでしょう。人にしか生み出すことができないようなもの、人にしかできない仕事、人にしか思いつかないこと…。そして重要なことは、その力を習得するために必要なことは、受け身の姿勢ではないということです。主体的に課題を発見し、解決に向かう力です。

もう一つの社会の状態を考える必要があります。
それはボーダーレス化です。国際化とかグローバル化という言葉は、間もなく「死語」になるでしょう。使われても、小さく限られた特定ものに対する表現になるでしょう。ボーダー、すなわち国境というものは制度としてはあっても、世界の人々の暮らしや経済活動にはない。ボーダーレスということです。

そうした中で日本はどんどん人口が減っていくという状況があります。世界の他のどの国もまだ経験していない少子高齢化の進行と生産年齢人口の減少です。ですから皆さんは貴重な人材なのです。しかし、人が減るので社会の営みに必要な人材を海外の人々に求めることになります。昨年5月に法律が改正され、海外から日本にきている留学生の日本国内での就職は以前より簡単になりました。実際に日本国内で就職する留学生は増えています。日本国内での就職にもボーダーレス化が次第に進むことは確かでしょう。

AI、通信技術の進歩でのSociety5.0へ次第に変わってゆく社会。そして、国内の就職環境のボーダーレス化。大きな変化がやってきます。皆さんは、その方向で将来を見つめることが必要なのです。誰も経験していない社会の変化が来ます。

では、それに対して、何を備えるべきか。何を学ぶべきなのか。しかも、どんな学び方で学ぶべきなのか。そのためには、どんな過ごし方が必要なのか。このことをいつも感じていてほしい。学び方はどうあるべきかをいつも感じながら勉強してほしい、学校生活を考えてほしいと、入学の日に伝えたいと思います。

明日のテストで点数を上げるために努力することは大事であっても、点数を上げることが勉強の目的ではありません。見つめるべき未来を見つめて、自分がなすべきことを自ら進んで考え、受け身ではなく自分が主体的に進めること、未来の道への備えと新しい自分を創り出していくこと、これが勉強です。

そのための環境が六浦にはあります。学ぶべきことや、どんな学び方をすべきかを考える環境があります。今年の卒業生150名は皆、それぞれの学びと学び方で巣立っていきました。どの生徒も豊かな学びの環境の中で、未来に必要な力を伸ばして卒業していきました。どの生徒も、校訓「人になれ 奉仕せよ」の精神を自分の学びと活動の中で考えました。そして、どの時代にあっても揺らいではいけないキリストの教え、「自分を愛するように隣人を愛する」という気持ちの大切さを学びの中で活かすよう学び、そして活動し、それぞれの道へと巣立っていきました。

先日、新入生登校日に私は皆さんに、地球に磁場があるように六浦にも「磁場」があると語りました。地球の北極と南極。その二つの極を結ぶ見えない磁力線。その磁力線が色々なものに影響を与える磁場。

六浦の磁場。六浦の二つの極、1つは「自分を愛するように隣人を愛する」という極、もう1つはあなたが生きていく「あなた自身がつくる未来」という極です。「自分を愛するように隣人を愛する」ことと「あなた自身がつくる未来」が二つの極です。

どんなに社会が変わろうと、その二つの極に結びつく磁場の中で学ぶことは大きな強みです。変わっていく社会に不安は感じても、学びの中から期待がきっと生まれます。自分が自分をつくっていくのと同時に世界をつくっていく。そこにはワクワク感がきっと生まれます。主体的な学びがしっかりと用意されている六浦の磁場で夢を大きく持ち、大きく、大きく、たくましく育ちましょう。

以上をもって、式辞とします。
あらためまして、入学、おめでとうございます。

2020年4月4日
関東学院六浦中学校・高等学校
校長 黒畑 勝男