校長のつぶやき(40)隣人を覚えよ


掲載日:2020.02.24

中・高6学年全校生徒数900名あまり。大きな規模ではない学校でも、生徒たちの頑張りは多岐に渡っている。直近の顕彰では、女子ラグビー部の「金沢区いきいき区民表彰」、生物部の 「新江ノ島水族館の水槽コンテスト最優秀賞」。ニュースになるものも、ならないものも、地道な取り組みがたくさんある。昨年その生物部はシンガポールへ。世界の高校生のレベルでのプレゼンテーション大会(英語)に出場した。努力を楽しんでいた。英語と言えばこの数年、ディベート競技のアカデミックな深さに興味を持った生徒たちの中から自発的にチームが生まれた。チームは自ら活動をしている。先日、「日本高校生パーラメンタリ―ディベート連盟杯神奈川県大会」に参加している。本校にはその他にも少なからず、個人的な活躍も含めて紹介したいことがある。これぞ六浦!と、語れるダイバーシティが見えてきた。

ところで、そうした生徒たちの活躍を支える教育の基にあるべきものは何か。主体的な「個」の確立を目指すことだ。しかし、主体的な「個」の確立とはその「個」だけの強さの確立ではない。キリストの教えである「隣人を自分のように愛せよ」。とても難しいことだが、難しいからこそこの教えを常に見つめ、そこに自分を照らしてみる姿勢を持つこと、それを求めるところに基を置いて主体的な個を育成することだ。

しかし、その「…愛せよ」の前に、「とにかく隣人を覚えなさい!」、「まずは隣人を意識しなさい」…と言いたくなる事件や出来事が巷(ちまた)には多すぎる。
現在神戸大学に勤務、感染症が専門で国際的に活躍する岩田健太郎教授がダイヤモンド・プリンセス号に入り、経験に基づく意見をYouTube動画で述べた。内容は専門的には難しいが、衛生区と汚染区の区別がわかる知識があれば、本質は幼児でもわかる内容で日本中が衝撃を受けたと思う。その後動画は削除。その理由はともかくとして、これに対する現場責任者、厚生労働副大臣の橋本岳さんによる発信に愕然とさせられた。事態からして問題はそれですか、という疑問を多くの人が感じただろう。教育にも由来する問題、一つのサンプルの演出のようなものだった。副大臣の当初の弁は、自分の立場で云々…的なことに終始。なぜ部外者が入ったのか?部外者が勝手なことを言っている!という趣旨だった。本校の教育活動の中なら、この仕事において感じるべき「隣人」とは誰ですか、という問いになる。

日々の教育活動で必要なことは、生きるために忖度をする心を第一に育てることではなく、またその逆に、立場を優先し立場の利益を守り自身や仲間の名誉を必要以上に守る心を育てることでもない。正しい意見や正しいかもしれないという助言、自分の良心のささやきに耳を傾ける心を育てること、そして行動の目的を考える心を育てることだ。利己心の危険、それを助長する「同調圧力」の危険について、実社会を身近に感じさせながら考える態度を育てる教育が大切だ。隣人を自分のことのように愛する。この精神をあらためて教育の基に置く。