校長のつぶやき(48)「寮ができると聞きましたが、どんな寮ですか?」

掲載日:2021.02.04

お答えします。

個室が183室で優れたセキュリティとICT環境完備の寮です。学校はゆっくり徒歩で7分。寮父母さんが住み込みでお世話します。日曜・祝日以外、朝夕の2食がつきます。本校にアルバイト雇用されるRA(Resident Assistant)学生も一緒に住みます。入寮生は国内・国外(帰国生)問わず高校生以上です。インバウンド留学(編入)生も生活する国際的な寮にする予定です。国内は自宅通学が出来ない生徒を優先する寮ですが、通学可能圏の生徒も寮に余裕があれば、目的によりますが入寮できます。寮を設置する理由と目的は次の通りです。

Society5.0‥・ ICTとAIの発達で社会が大きく変わる・・・ と、誰もが強く感じている時代の流れがあります。仕事や仕事の仕方が変わります。バーチャル化とデジタル化が加速すると言われてきました。皮肉なことにコロナ禍がそれを加速させています。そして、そのコロナ感染の収束が見えれば日本はこれまで以上に、ASEANやインド、オーストラリア、ニュージーランド、台湾と、経済や文化の交流、人の交流がリアル同様にバーチャル上でますます盛んになるでしょう。
コロナ以前のデータですが、2017年度の日本の貿易の相手を地域別にみると、輸出は、北米へ20.7%、欧州へ12.4%、合わせて33.1%です。しかし、これは50%を超えていた20年前とは大きな変りようです。一方、アジア全体では54.8%です。中国と香港を除いたアジアは30.7%です。大洋州では2.9%です。アジアと大洋州の数字に注目します。経済の流れは人の流れを生むからです。(ジェトロ・アジア経済研究所、『ドル建て貿易概況』。2017年度確定値で、日本からの輸出総額に占める地域別割合での数値から)
そうした国々との関係を見ながら科学技術立国で観光資源がアドバンテージの日本の近未来について考える時、そして併せて、日本は少子高齢化で人口縮小が進み、生産年齢人口の減少はそれ以上に早い?ということを考える時、日本国内の国際化は必ず進むことに気づきます。ゆえに、国内外の社会状況を考え、日本の子どもたちの教育内容や教育環境を一つでも多くグローバル・スタンダードにすること、そして、理系人材をしっかり育てることが重要だと考えます。

一方でAIとIoTが浸透し職場環境の変化がどんどん進みます。国内の国際化も進む中で、日本の若者は活躍する「場」を自分で確保する力が必要になります。これは決して国粋主義的な発想や民族思想ではありません。そうではなく、現実への対応力の育成を考えるべきという考えです。日本の生徒は「学力」ではけっして劣っていません。そして全国民が水準の高い教育を受けてきています。しかし、ダイバーシティに不慣れです。そして、現実的な英語運用力の低さもあります。その英語力でのコミュニケーション力の弱さという大きな課題もあります。英語教育の問題は典型的で、ずーっと、ずーーっと引きずってきている問題です。(・・・本当に英語教育は、日本の教育のガラパゴス化の最たる例です。試験制度のために英語の学習動機が左右される??・・・馬鹿げています・・・)これらを克服しなければなりません。

その英語教育で言えば、答えは、通じる語学力を育て、ダイバーシティの環境でも目的に向かって進めるコミュニケーション能力を早期に育てることです。インターナショナルな場面で太刀打ちできる理解力と意思疎通力、そして適切なソリューションを提案する力の育成が大事です。そのための知識や基本的な学力はもちろんですが、コミュニケーション能力とその場面に通用する「マインド」を早く身につけることも、もう一つの重要で大きな課題です。
この「マインド」について攻め込んで言えば、中高生の多くはまだまだ根本的にある感覚を持っているでしょう。・・・集団の均質感と同調志向の中にいることでの安心感とか、個人の個性と主体性を押し殺すことが安堵感となっている感覚とか・・・これらが普通でしょう。これを打破することが必要なのです。学校教育で長年にわたって国際交流事業に関わってきた経験から、この「マインド」の偏狭さが教育環境のグローバル・スタンダード化と常に対峙してきたと感じています。

現在はコロナ禍で停まっていますが、平和できれいで清潔な日本の社会や文化への憧れや、日本企業への信頼などから、日本に関係する仕事に就きたいという世界の若者たちがインバウンド留学生として増えています。そのインバウンド留学生の「中堅外国人材」としての日本国内での就職者が増えている、あるいは帰国し母国に進出している日本企業で中心的な働き手になっていくという状況があります。懸念することは、日本の技術や日本の様々なシステムに日本の若者が置き去りにされていく・・・ということなのです。これではいけない!なぜなら、日本は世界との経済関係が無ければ維持できない国ですが、活躍するのはmade-in-Japanのモノやシステムだけではなく、ヒトも!でなければおかしいでしょう?日本の若者は取り残されていいのですか?ということです。国粋主義でも民族主義でもなく、日本の教育環境の不十分さの問題です。

そうしたことから、教育環境の整備として「一条校」でも、ある学校が特化して国際環境を進んで整えることも必要だと考えてきました。日本で学びたいという積極的な態度を持つインバウンド留学生と高校時代から生活環境を共にして学び、基本的に日本語と英語で自分のコミュニケーション力を育てる環境をつくるということです。生活や活動の中で様々な違いを知ることがねらいです。ダイバーシティの環境で、それまでの自分の中にある「当たり前」や「普通」を考え直す。こうした機会を増やしたいと考えています。
外国へ留学した生徒は必ずと言っていいほど、留学生活の中での振る舞いや考え方において、「自分の常識が必ずしも常識ではない」という経験に直面します。そして、単なる語学力ではないコミュニケーション力を伸ばそうという気持ちに火がつきます。そして多くの人が学ぶことへの意欲や学びのインセンティブを得て帰国します。
そういうことが少しでも国内の「一条校」に学んでいてもできるのならば・・・、そして、少しでもインターナショナルな場面で活躍できる力がつくのなら・・・と考えるわけです。日本の未来を考える時、これは将来に絶対に役立つ経験となるからです。寮は、そのために設置する、これが大きな理由です。
*「一条校」:日本の学校教育法第1条に定められている種類の学校で、いわゆる「普通の学校」