校長のつぶやき(24)3学期始業式メッセージ「今年の箱根駅伝から考えたこと」

掲載日:2019.01.08

新しい年2019年を迎えました。

2学期終業日のクリスマス礼拝では、私たちのための救世主イエスの降誕とそのイエスとの出逢いの意味を考えました。今日、3学期の始業日は、イエスの僕として活動するパウロがフィリピにいるイエスと出会った人々へ書き送った手紙から考えてみたいと思います。

今日の箇所を新しい英語訳の聖書の文章から意味を考えてみました。
私たちの手にしている聖書のフィリピの信徒への手紙3章14節、「神がキリスト・イエスによって上へ召して、お与えになる賞を得るために、目標を目指してひたすら走ることです」では、パウロはフィリピのキリスト信徒に対して、次の意味で語っているようです。「神様が救世主イエスを通して、神様が私たちを招いてくださるという大切なことに向かって、どんどん進もう。」
3章16節の「わたしたちは到達したところに基づいて進むべきです」は、キリストとの出会いから私たちは新しく歩んできた。その歩み方と同じように歩いて行こう。そして、出会いの時の気持ちと同じように今もありたい」という意味のようです。

ここで何を読み取るか、です。つまり、人はやっぱり自己中心である。神様から与えられたキリストを知るということにおいても、イエス・キリストを知った時から次第に解放された気持ちになって歩みを緩める。立ち止まる。まるで、自分自身の力で到達したゴールにいる気分で前に進むのを止め、おごり高ぶってしまう。誰から何故、キリストが与えられたのかを考えることを忘れてしまう、あるいは考えなくなってしまう。パウロは、それが人間の性質、また自己中心性で、驕りや高ぶりになりがちなことを思い起こさせようと語っているようです。

今日読んだ聖書に「ただひたすら走ること」とありましたが、皆さんは、お正月の箱根駅伝を見ましたか? 第95回東京箱根間往復大学駅伝競走(1月2日―3日)です。

青山学院大学の5連覇、連続5回の優勝は多くの人が確実と思っていました。ところが往路では6位でした。往路の結果は、トップの東洋大学と5分30秒、2位の東海大学と4分16秒の大差での6位でした。

第一日目の往路のレースが終わって、原晋監督は暗い表情で箱根の旅館に戻ったそうです。すると、先に旅館に到着していた翌日の復路レースの最初の第6区を走る4年生の選手が、監督に声をかけたそうです。「監督、元気出してください。僕、明日の残り3キロ、死ぬ気で走りますから。見ていてください」。

翌日の復路のレース。トップの東洋大学と5分30秒、2位の東海大学と4分16秒の大差で臨んだわけです。中継を見た人は皆、きっと手に汗を握って青山学院大学の選手の走りを見ていたと思います。私もこの復路のレースは最初から引き込まれました。

そして青山学院大学が最終10区へタスキを渡した時、1位の東海大学とは3分43秒差、2位の東洋大学とは8秒差に縮まっていました。タスキが渡って間もなく東洋大学を抜きます。気迫を感じます。ペースを全く緩めずに1位の東海大学をひたすら追う姿。先頭を走る東海大学を詰めきれずに終わりましたが、あきらめずに走る姿には感動を覚えました。そして見事なタイムで復路優勝を飾りました。しかし、総合では2位に終わりました。

皆さんも知っていると思いますが、箱根駅伝は往路5区間、復路5区間、合計10区間でのレースです。今回のレースの区間賞を見ると、青山学院大学は4つの区間で区間賞を取っています。往路の3区、復路の6区、7区、9区。そのうち、2つの区では区間新記録でした。旅館で監督に、「…死ぬ気で走りますから。見ていてください」と励ました選手は6区での区間新記録を出しています。でも、総合2位だった。確実視されていた5連覇は成し遂げられませんでした。

原晋監督の次の言葉が印象に残っています。「われわれは良い負け方ができたと思います。アンカーの鈴木が笑顔でゴールしたことも良かった」。そして、「復路は地力を発揮できて見せ場を作れました。あきらめない心。生きる力を、箱根駅伝を通して学ばせています。」と語っていました。

10区の最後の走者は爽やかに笑顔でゴールしました。復路のレースぶりで、誰もが何かを感じたはずです。何かが、何かを狂わせていた…のか。笑顔のゴールの様子が、記事になっていました。「…状況を知らなければ優勝シーンと見間違えるかもしれない。」

インターネットの記事には、青山学院大学関係者の「調整は万全だった。大会直前に主力が故障することもなく、メンタル的にも充実していた。誰もが5連覇できると信じて疑わなかった」という、首をかしげながらのコメントが載っていました。また記事には、スポーツ記者のコメントとして、「4年生のある主力選手が敗因を聞かれて、『緩みでしょう。1年の時から年々チームの雰囲気が緩んでいきました』と、ハッキリと口にしていたのが印象的だった」との記事もありました。記者は、「周囲から常勝軍団と持ち上げられ、『緩み』が積み重なっていったのでしょうね」と感想を述べていました。

レースの後のインタビューで青山学院大学原晋監督は、「甘えがあった。50歳を過ぎて優しくなった。こだわり、しつこさがなくなった。私自身、もっと心を鍛えないといけない。」と述べていました。原監督自身の、監督としての反省をふくめた言葉なのでしょう。インターネット記事には、原晋監督が、「連覇を重ねるごとに『進化』を恐れてしまいました。現状維持は『退化』でしかありません。常にチャレンジ精神がないと勝ち続けられません」と語ったとありました。

青山学院大学チームの惜敗には色々な要因がある、複合的なものでしょう。しかし、そこには何気なく教えてくれるものがありました。
底力を持ちながらも前進が止まってしまうことがあるのが、「人」。しかし、そこで何かに気付いて全力を再び出すことが出来るのも……「人」です。負けたのに笑顔があった2日間のレースに感じ入りました。

3学期です。新しい学年に向けて進級の準備です。「…目標を目指してひたすら走ることです。」とありました。始めましょう。