校長のつぶやき(117)世界に並ぶための…学び・力の育成・環境整備-退任にあたってのご挨拶-


掲載日:2026.03.23

去る1月17日の中学入試直前説明会(最終回)の終了後に、「『校長のつぶやき』を読んで説明会に参加させてもらいました」とお声がけをいただき、115号と116号の感想をお聞かせくださいました。入試の当日の説明会の終了後には、海外進学と英語準備についての深い質問をいただきました。子どもはどう見ても文系なので、学校探しで早くにこういうお話を聞いていれば志望順位が変わっていたかもしれないという感想をいただきました。変わる社会を先取り的に敏感に捉えている方が増えていることを実感しました。(115号-2026/01/01「新年のご挨拶-社会を眺めて…『校長のつぶやき』の終章へ」と116号-2026/01/16「令和の開国」)

この数年、説明会の後に保護者の方、特に父親の方々からのお声がけをいただくことが増えてきていました。海外からの方々と一緒に仕事をすることが増えていて、子どもの未来を想像し、将来に求められる力をタイムライン的に、またルート的にどのように準備するかを考える方々が少しずつ増えていると感じます。

「子どもは成績が中位で可もなく不可もなくというようなタイプなので、普通の考え方で学校選びをしていました。仮に難しいと考えていた第一志望に入れたとしても学校生活での充実感が味わえるのか、第二志望なら?ということで心配でした…しかしそういうこと以上に、親の私が狭い視野になっていることに気づかされました。将来に対して備えるべき力や社会の変化を深く考えることは、校長先生が話されたように台風への備えと同じだと思い、不充分だと思いました。学校選びの機軸を変えました。」

2025年度にオランダのマーストリヒト大学に正規に進学した女子生徒は、将来の夢を日本とヨーロッパ間の国際的なビジネス関係として、大学から世界基準で学びたいとしての進学でした。学ぶ分野によっては、大学進学から世界を視野に拡げる社会になってきている、このことを実感させる進路(=針路)の結果でした。

AIの浸透の波、職種によっては大きく採用枠数が変化する社会です。さらに日本は生産年齢人口の減少でもう一つの波、国内労働環境の国際化を考えなければなりません。発展途上国には、経済が伸びて教育水準が上がっていることで国内に大卒者が溢れ、就職先を世界に求めざるを得なくなっている国が増えています。一方で日本は発展途上の国々とは違う事情で、進路指導にも視野の拡大の必要が生じていると感じます。日本の教育は国際社会の波の中で漂うような状況になりつつあることを覚えるべきでしょう。

六浦中・高は12年かかりましたが、目指してきたことがあります。生徒が将来を展望して大学進学を考えるとき、人生設計の上で合理的に必要ならば、「国内大学と海外大学を並列・対等に並べて選択」できる教育環境を整えること。進学先で必要なアカデミックな英語力をつけること、基礎的なアカデミックスキルを英語でこなせること、そして学費対策でした。「並列・対等に並べて選択」の鍵を持つことです。

まずはその鍵の一つの英語力です。2015年に横浜切ってのスタートで、中学全クラスでCLILを導入。英語が母語とは限らず、TESOLを専修してきたGETs(Global English Teachers)の8人を常勤化。高校に設置したGLE(Global Learning through English)コースのカリキュラムにIELTS(受験まで)を組み入れた必修科目を設置、2024年には全国で4番目にIELTS推進校に認定されました。また、日本ではJAACが統括するPCD-DDPを課外にオプション展開する英語で学ぶ環境の提供。こうして海外への正規進学に対応できる英語教育環境を整えてきました。

そしてもう一つの大きな鍵、学費への対策です。英語力は何とかなっても為替の円安停滞で、単年度の語学留学レベルとは違い、学費の準備は大きな課題です。JAAC、NCNとの進学準備プログラム上での協定や大学個別での協定締結を着々と取り進めてきています。米国の大学では単独で、州民学費並みでの推薦入学、マレーシアにキャンパスを構えるオーストラリアの大学ともマレーシアキャンパスからオーストラリアキャンパスへの編入ができる内容での推薦枠なども徐々に取り進め学費対策をすすめてきました。(HP上でのニュースをご参照下さい)

海外への正規進学は特別な道に聞こえるかもしれませんが、そうではありません。日本の人口縮小と生産年齢人口の減少の進行に並行して政府が新たに掲げて進められている留学生受け入れの40万人計画。インバウンド留学生の修了者は50%を超えて日本国内就職となり、日本の経済活動にとって徐々に大きな力となってきています。AGIやロボットの浸透、RPAの隅々までの普及による仕事の変化、職種によっては少ポスト化での高度国際人材との競合…。これらを考えれば、10~20年後の変容は必至です(校長のつぶやき(116)をご参照ください)。

教育面を世論にするとき、少子化の影響による大学の生き残りや募集停止とかに関心を寄せるよりも、保護者と未来に生きる子どもたちの側から、子どもたちの未来に備える教育として、中等教育レベルまでの段階でどうするのかに関心を寄せるべき、と強く六浦中・高は考えてきました。

大学進学をシビアに子どもたちの未来への効力と考えるとき、海外進学もあまねく、これまでの大学進学と同様に考えることがあってよいはずです。もちろん子どもの指向性を踏まえた上でですが、国内大学進学へのしっかりとした進路指導と並行して、学びの分野や将来の夢の現実への投影から地球規模で進学先を考えたり準備したりすることができてよいはずです。海外進学も国内進学と並べて考えられる環境の中では、海外進学の準備プログラムでの英語を通してのアカデミックな学びをグローバルスタンダードの受験準備として、その修了実績をアドバンテージに国内大学へ進学することも大きなメリットです。

六浦中・高はそのベクトルで真の「国際化」での学校づくりに励み、第二のフェーズに入ります。2014年に校長として入職し12年間を務めて参りました。その振り返りを新展望に期して退任いたします。ありがとうございました。

学校長 黒畑勝男

追記:隣の「関東学院六浦小学校」で『つぶやき』を同じ視線の社会観で続けさせていただきます。