校長のつぶやき(116)令和の開国


掲載日:2026.01.16

入国管理法の各種改正で、昨今はインバウンド留学生の修了(卒業)後の国内就職率が上昇、高度人材へのビザ切り替え者の増加。国内就労環境のグローバル化が進んでいます。日本の人手不足に貢献する有為な人たちが増えることはとてもありがたいことです。一方で、AIの進化と浸透でコンサル的な仕事も激減すると言われるようにもなってきています。子供たちの未来を思うと、職業別の有効求人倍率も冷静に見ながら、教育について考えるべきことがとても多くなりました。

さて、「はたちのつどい」の翌日の1月13日のニュースです。あらためて驚いた方も少なくなかったでしょう。「東京都内で最も外国人比率が高い新宿区は、成人式対象者4286人のうち、外国人は2114人と約半数を占めた」こと。「東京都全体では約8人に1人(約13%)が外国人になった」というニュースです。東京にはさまざまな教育機関がありますから、留学生が集中的に多いことは驚くことではありません。ただ、それにしても「約8人に1人が外国人」です。

極端な考え方ですが、留学生が今住んでいる東京での就職に集中すると仮定します。25年度は教育機関を修了(卒業)する半分近くの人々が日本に残留での就職を希望すると見られますから、今年1月、はたちで「つどった」人々の就職では16人に1人が日本社会への「助っ人」になる計算です。海外との取引が多くの分野で当たり前ですから、「母国との架け橋」になる人々の働きは日本にとっても大きな力です。しかし、大人が漠然と感じていたグローバル化はこうして、子どもたちの世代に数字的に圧力となっています。一方で、日本国内育ち、日本しか知らず、特に技能を持たない、理・工系的専門性もない、言葉で日本語以外は?? という社会的レディネスの状態の人々はこれからどうなるのでしょう。あらためて時代を見つめて、教育と教育観の再考が必要です。

「令和の開国」。北海道出身の元自由民主党幹事長の武部 勤 氏が2021年に出した著作のタイトルに含まれている言葉です。著作では冒頭、札幌山の手高校でのラグビー留学からラグビー日本代表になったリーチ・マイケル選手らの対談などで共生社会への考え方が現実的に語られ、深くは、健全な就労環境の整備など説かれています。しかし2025年です。これまでの入国管理法の改正で就ける職種は広がり、家族帯同の許可が拡大し、各段階での制度が揃い踏みとなった2025年。インパクトのある「開国」という言葉が、法改正の積み重ねと留学生数の数値で実体、実勢となったと感じるのは2025年。2025年は、未来から振り返られる年になる気がします。 

(参照;関東学院六浦中・高『校長のつぶやき』(107)

日本はOECDのPISAテストで優秀さを誇りながら、大学の選択では国内進学と海外進学とを並列・対等に考えることが難しい国です。英語教育の脆弱さと特殊さゆえに選ぶことが難しいのが現実です。OECDの海外留学生の送出比率(当事国の大学生全数の中でのアウトバウンド留学比率)は平均で1.9%ですが、日本は送出比率0.9%です。隣国の韓国は送出比率が3.3%です。日本のこれまでの教育観や国情から内向きの競争状態が消えないことは仕方ありませんが、インバウンド留学生の増と日本国内就職者の増との関係が未来にどういう状況を生み出すかを想像しないわけにはいきません。

国内グローバル化とAIとで社会は変わると知りながら、子どもたちは数年後に高校3年を迎えます。進路選択のとき、特に、文・経済系・国際系なら専攻したいジャンルに合わせて、学びの場を国内・海外で並列対等に選べる力がほしいものです。その力があれば、国内就労環境のグローバル化進行でも怖くはありません。また、理系指向なら、大学は日本全国から選んで大学院まで進む…しばらくは概ねそれで良いと思います。 いずれにしても、「開国」の状態に突入しているのは明らかですから、学びたいことと学びの場を国内・海外で並列対等に選べる力は、将来、社会の中での椅子取りゲームで発揮する力も育てます。大人は自分が経験しなかったこと故に、なおのこと早期に、子どもと一緒に開国状態の今後を考えるべきでしょう。