校長のつぶやき(114)クリスマスを考えるクリスマス・ペイジェント


掲載日:2025.12.19

キリスト教の精神を教育の理念に掲げる学校(子ども園も含めて)は、クリスマスの礼拝に降誕劇を添える学校がほとんどと思います。関東学院六浦中学校・高等学校も同じです。が、本校の降誕劇はとても印象的でユニークです。

降誕劇、いわゆるクリスマス・ペイジェントは、イエスのキリストとしての誕生の意味を聖書に沿ってドラマ化したものです。生徒たちが、イエスの受胎を告げる天使、マリアとヨセフ、羊飼い、時の為政者ヘロデ王、そして東方の三博士などの役を演じます。

ナラティブは、聖書個所の朗読、演技、そしてオルガン演奏、讃美歌で進められます。と、ここまでは……学校によって演出の仕方は個々に特徴があるでしょうが……基本は同じで、聖書が語る「インマヌエル(神は私たちと共におられる)」の意味が、最初のクリスマスのドラマを通して伝えられます。

しかし、本校はこのドラマの最後に「十字架の行進」が添えられます。ここが違う。最終の第4場「はじめてのクリスマス」の後、ステージも会場も暗転。すると吹奏楽による重々しい「カンタベリー・コラール」の演奏が始まり、17人の生徒がLEDライトのトーチを模した長い棒を一本ずつ持ち、曲に合わせて会場席後方からゆっくり行進してくる。

曲の終わりには、暗転のままのステージいっぱいにLEDトーチが点線で十字架を形づくる。そして退場は、パイプオルガンによる「きよしこの夜」。いつもは誰もがほっこりとさせられる曲との意外性に包まれて、トーチが一つ一つ退場し消えてゆく。

演出的には、少々ショッキングと言えばショッキングです。第4場「はじめてのクリスマス」でキリストの降誕の喜びがしとやかにやさしく温かい色の光で綴じられ、そして暗転、突然の「十字架の行進」。降誕を祝うクリスマスに同時に十字架上での死という使命を持ったキリスト・イエスをくっきりと描き出す脚本。ここが普通のクリスマス・ペイジェントではないところでしょう。

はるか昔、2000年以上も前に、神様から私たちにキリストとしてイエスが贈られ、以後、毎年、世界の各地で2000回以上も「イエスの降誕」をお祝いします。しかし、地球上には争いが絶えません。国の宗教としてキリスト教を掲げている国が率先して戦争を起こしています。人間社会の悲しさをいっそう深く覚える日でもあると思うと、この「十字架の行進」はクリスマスをとても深く考えてもらうように仕立てています。私も着任した12年前に衝撃を覚えたキリスト降誕劇。今年が最後となり心に焼き付きました。