校長のつぶやき(93)任命された者として・・・ジョン万次郎


掲載日:2024.02.19

 2月15日(木)の中学礼拝は渡邉和美先生の奨励。タイトルは「ジョン万次郎」でした。メモ(抜粋)を掲載します。

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・・・天保12年、1841年、江戸時代です。『天保の改革』が始まった年ですね。土佐の、現在の高知県土佐清水市中浜の、貧しい漁師の家の、14歳だった万次郎は仲間4人と一緒に漁に出たんですけど、遭難してしまいました。漂流して太平洋の無人島に漂着しました。・・・・・・アメリカの捕鯨船のジョン・ハウランド号によって全員が助けられましたが、日本は鎖国状態で、外国の船は日本に向かうことはとても危険で、仮に帰国できたとしても、外国の船に乗った万次郎たちの命の保証はないので、アメリカに向かいました。ジョン・ハウランド号の船長のホイット・フィールドさんは、万次郎がとても賢い少年で気に入り、万次郎を除く4人を安全なハワイに降ろしましたが、万次郎にはアメリカへ行きたいかと聞きました。・・・
・・・アメリカのマサチューセッツ州で、ホイット・フィールドさん家で一緒に暮らし、学校に通いました。自分よりもずっと年下の子どもたちに交じって、14歳の万次郎は勉強しました。土佐にいるときは貧しく、小さい頃から漁に出ていて、学校(寺子屋)に通えなかった万次郎は、一生懸命に勉強したそうです。・・・・・・・・・

 渡邉和美先生の話は、万次郎のアメリカでの努力のこと、日本へ帰国する経緯、10年後の1851年に沖縄への上陸、長崎の奉行所での取り調べ、帰郷して土佐藩で下級武士への取り立て(抜擢)、その後、幕府に招聘され江戸へ・・・という引き込まれるようなストーリーで、中学生は真剣に聞き入っていました。この間に出会った、またはそう推察される人物の紹介もありました。三菱グループの創始者となった岩崎弥太郎は直接、坂本龍馬も?とか・・・。当時、幕府はペリーの来航でアメリカの情報がほしいとして、「直参」として重宝された、しかし、アメリカのスパイではないかと幕府に疑われ・・・と続きました。

・・・1860年、「日米修好通商条約」の約束の文書(批准書)を持って、「咸臨丸」の通訳としてアメリカへ行きました。勝海舟、福沢諭吉、板垣退助など歴史上の重要な人々とともに船に乗っていきました。・・・
・・・万次郎は、日本とアメリカとの架け橋になったのは間違いありませんが、それは同時に、日本の近代化への時代の架け橋の役割も果たしたのではないでしょうか。・・・
・・・今日お読みした聖書の箇所の「・・・あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。・・・わたしがあなたがたを任命したのである。」  ジョン万次郎の人生を見ても・・・
・・・・・・今はとても便利で何でもインターネットで繋がりますが、本校でも奨励しているように、実際に自分の目で見て、体験してみることが大切だと思います。(終わり)
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<つぶやき・・・所感>

 ジョン万次郎。幼くして父親が亡くなり、9歳から貧しい少年漁師だったと伝えられる。全く読み書きも計算も出来なかったと思われる万次郎。14歳からわずか10年間で、言葉が通じない全く未知のアメリカで多くを学んだ。帰国後は幕府で翻訳や通訳、造船の技術指揮、教育の仕事に励む。43歳の時、明治3年(1870年)には明治政府から視察団員としてヨーロッパに派遣される。ジョン万次郎の功績は当然、万次郎自身が日本の近代への架け橋だった。
 考えれば、言葉が通じない全く異文化・風習の中で、知る、学ぶは辛かったと思う。家庭教師がついての英語はもちろん、学校で学ぶ数学、測量術、航海術、造船技術は、基礎の学びの無かった万次郎にはとても厳しかったろう。しかし、成績はとても優秀で学校ではトップであったこともある。結果としてアメリカへの日本人留学生第1号。その前に初めての渡米日本人。フィールド家の養子として篤く護られのびのびと学ぶことが支援されての数々だが、しかし、成長し、捕鯨船での仕事をする中で、まだ鎖国中の日本への帰国の決意が固まっていったという。
 アメリカでは教会に通いキリスト者になった。キリスト教信仰に関係性を無理に繋げるわけではないが、歴史の見方によっては、日本を開国に導く役割を心の深いところで担わされた。また、福沢諭吉の『学問のすすめ』もジョン万次郎がいなければ書かれなかっただろうという類推もある。ジョン万次郎の人生は神の計画の中の「召命」で、日米の歴史を進めるためのまさに任命だったとも言えるのではないか。運命の人生だったのだろう。同時に、フィールド家もまた、万次郎とともに任命された人々だったのだろうと思えてならない。どこかで守られながら、使命が与えられている・・・「召命」。信じる信じないの論は別にして、人間の人生、人生の不可思議を考える例としてとても良い奨励であったと思う。

                       

ヨハネによる福音書 15章 16節
「あなたがたがわたしを選んだのではない。わたしがあなたがたを選んだ。あなたがたが出かけて行って実を結び、その実が残るようにと、また、わたしの名によって父に願うものは何でも与えられるようにと、わたしがあなたがたを任命したのである。」