校長のつぶやき(92)10年先を見据えてつけるべき、もう一つの力


掲載日:2024.02.12

中学入試が行われた2月1日の朝、7時45分。中学3年生10名と高校2年生の20名、教員2名、「PYT山陽研修」の参加者が新横浜駅に集合。昼前に岡山駅着。集合写真を桃太郎像の前で撮ったあとは計画通りに12のグループに分散。実地研修を開始。17時、駅のすぐ近く「三井ガーデンホテル岡山」にそれぞれが帰着。夕食後20時30分、全員でのミーティング、翌日の研修内容について確認。

これは、本校の大きな特色となっている「選択制グローバル研修」の中の一つ、PYT(Plan Your Trip)研修の山陽版です。参加生徒は、今回はたまたま中3と高2ですが学年横断型です。それぞれが事前に決めたテーマで仮説を検証するべく訪問先で探索します。このタイプの「Plan Your Trip研修」では予定行程が崩れることが多々あります。訪問先で思ったより時間がかかるのは(当たりまえの)ハプニング。計画通りに行かないのは、自分で見て聞いて実際に触れて、学びの内実を自分で編んでいくからです。これ自体には何ら問題はなく、むしろOODA(Observe<観察・分析>、Orient<方向づけ・指針>、Decide<意思決定>、Act<行動>)の体験としてよいことです。つまり、自分の活動で、仮説の検証から得ることが直接の収穫で学びの成果ですが、もう一つの成果としてのPBLでのプラグマティズム的な学びの「仕方」の経験、これも重要なことなのです。

これからの急速な社会の変化の中での長い人生を考えると、OODAの柔軟な態度が必要です。自分の目標を精選して計画を立てる力を前提として、行ってつまずいて考え(Observe)、そこで修正に向かう(Orient)、再度構成して(Decide)実践する(Act)、これらの力の確立が大切です。六浦中・高が提案する「選択制グローバル研修」には、一見、その字面に漂う華々しさとは違うねらいがあります。主体的な学びの追求です。しかし、その主体性は利己的であっては意味がない。「人になれ 奉仕せよ」に立ちます。

2024年2月9日のインターネット記事、『FNN プライムオンライン』に「【速報】技能実習制度は廃止へ…外国人労働「育成就労」創設の方針決定」という記事がありました。本校の学校説明会でお話ししてきている国内就労環境のグローバル化の進行はどの業種・職種においても進みます。10年先に社会に出る中高生はその後に長い人生があります。ますます真剣に見つめるべき大きな流れだと確信します。

法律改正までにこれほど時間がかかりました。不足する労働力の確保の策で作られたような制度で、社会の矛盾や人権軽視についての理解や受け止めの問題が起こっていました。皆がどことなく上から目線で、高みから見物する他人事的な雰囲気に流されてきました。隣人を自分のように思わず、人任せの無責任さから生まれた現象でしょう。

人口縮小での労働力の不足を短期的借り入れで、いわば搾取で補おうとしてきた、海外からの人材にマウントをとってきたような考え方は、これから先の社会では自らの立ち位置でも大きく間違っていたと気づく場面や状況が多くなるのではないでしょうか。協働する組織や地域、社会の中で抱えていくであろう問題は簡単ではないかもしれません。職場では、観察と方向付けの力が求められるでしょう。積極的にその解決策を平和的に提案していく力と、その中で受け身ではなく貢献的に働く力が強く求められる時代が来ます。そのとき、求められる力はどんな力なのか、そういう力はどうすれば身につけられるのか。 求められる力の多くには非認知能力の高い土台が求められるはずです。主体的学びの経験とその応用力の育成は、アカデミックスキルの育成と同等に、否、これからのAIの働きを想像するとそれ以上に求められるとも考えられます。高い非認知能力を育成するのは年齢を追うにつれ難しくなります。若いうちに・・・中高で、できれば小学校から・・・つけるべき力の育成が大事なのです。