校長のつぶやき(83) 今年の六浦祭のテーマは「十人十色」


掲載日:2023.10.13

校長のつぶやき(83) 今年の六浦祭のテーマは「十人十色」

今年の六浦祭は10月27~28日の金曜と土曜の2日間の開催です。テーマは「十人十色」。打ち出しのキャッチとコンテンツは「やろう地域創生✕文化祭」。生徒会は取り組むコンテンツを「地域創生」ということにスポットを当てました。

「十人十色」という言葉はいま日本の社会の中で一番必要な言葉だと強く感じます。日本の社会はあらゆることで十人十色は建前で、実は十人「一色」なっている…のではないでしょうか。強い色に、主流の色に、それに利害も絡めて組織的にも忖度する。批判もしない。むしろ意見や批判はタブーで、同調圧力が自然と働く。そして排除までも起こる。表向きでは、やれダイバーシティーだ、それ多様性だと言いながら、十人十色だと言っても実は本心では違う。知らず知らず、あまり考えずに同じであることを互いに強要する。さらには虐(しいた)げることもある…息の詰まるような社会と感じることもあります。そこにSNSが浸透してそれに輪がかかり、集団心理も働いて時には人を取り返しのつかない究極まで追い詰めてしまう。

十人十色。人はそれぞれで好みは異なっている、意見も違う。ひとりひとりは別々で、嗜好や趣味は一様でない。それでいいじゃないですか。英語では、「So many men, so many minds.」という言葉があるらしいですが、ストンとよく分かる表現です。

違う色同士がお互いを尊重することが不可欠です。その色をその色としてお互いに認め合うこと。強い色は自ら知り他の色を呑みこむのではない。邪魔をするのではない。それぞれの色が自信を持ち、個性として発色するべきでしょう。そうして違いがあって、お互いに存在し、全体が調和している。

「調和」とは活動目的によっては同色になることを求めることもあるでしょう。しかし、日常は違う色同士がお互いの色の存在を認めて、時には引き立て合って同じ場所に在る…ということ。しかし、「調和」と言わないけれども時には人を究極まで追い詰めるほど気味が悪い調和の強要もある。自分自身を必要以上に隠しながら、合理性のないルールで自分を押し殺すように強制されることも多々あるわけです。でも、これでは人々に主体的な未来はありません。

本校も六浦祭は、コロナ禍で「対面」での活動が中止でした。しかし、幸い本校は2015年にLAN環境を整備してICT活用の授業の開始。2018年には生徒の端末の個人所有で様々な工夫を始めていました※から、コロナ禍でも学校活動は止めずon-lineでの学びと活動を行うことができました。on-line授業の時は双方向型で、短縮時間で一日5つの授業。半数登校の時は本校の場合、生徒の半数はon-line、同時に半数が教室での対面で同じ授業に出席でした。日常的にはe-learning教材の活用で学習の個別最適化も推進。また、集団で行う協働型の活動も進化させました。中学1年生の社会見学(金沢区の公共施設、事業所、お店などへの訪問調査)も、コロナ禍で学校閉鎖中でしたが授業と同様に実施しました。中1全クラスで訪問先が40弱。各グループがon-lineで一斉に活動しました。訪問先の方々とは、学校にいる教員と家庭の生徒たちとが電子上でつながって、事前から事後の活動まで目的達成です。本校はPRしませんでしたが、毎日コロナ禍のニュースで取り上げられているICT教育の実践例のほとんどを超えるレベルで実践していました。

そして、教室での学びだけではなく、実学・実践としての体験や経験に結びつけて、主体的な学びのインセンティブ(やる気・きっかけ)にしていく。未来への学びへの自己啓発です。中学の特色でもある言語力活用講座は、NIE(新聞を活用する教育)として実践していますが、realでもon-lineでも、「必要があれば学びを実社会と結ぶ」ということを意識しています。本校の特色となった選択制グローバル研修も同様で単なる修学旅行ではありません。学年横断型で様々なコースで実施していますが、この考え方を合理的に進めることが狙いで、学びへのインセンティブなのです。

去年や今年の六浦祭の取り組みを見ると…、校長の手前味噌的な見方、奢った言い方になるかもしれませんが、こうした実学的な内容を重視する六浦中・高の新しい教育のイズムが生徒たちの中にも浸透してきていると思います。今年のテーマの「十人十色」は単純に掲げられたのではなく、活動の大きな標として「地域創成」という切り口で設定されています。「十人十色」を「地域創成」と絡めて考える。凝ってるなぁ、嬉しいなぁ。

六浦祭を生徒たちが催します。あらためて、生徒たちと一緒に十人十色を考えたいと思います。六浦キャンパスに吹く風も秋の香りも、もっともっと皆が十人十色になればいいと語っているようです。十人十色で輝け。

※関東学院六浦中学校・高等学校は、2020年10月に、2018年からの教育実践の評価として、Google社から全国でもまだ多くはない「Google for Education の事例校」と認定されています。