校長のつぶやき(115)2026年 新年のご挨拶


掲載日:2026.01.01

校長のつぶやき(115)2026年 新年のご挨拶

「新年を寿ぎ、皆様のご発展とご健勝を祈念します」

関東学院六浦中学校・高等学校は2024年の70周年を経て、2025年は新たなフェーズへの準備を進めました。いっそう大きな変化に向かう未来を見据え、進路指導では大学進学を「国内と海外とを並列」にして考える重要性から新しいスタッフを迎えて、国内大学の様々な入試に対応する教育体制を構築し、海外進学に必要な学習と準備の環境を整備し、言葉の通りに内実のある「国際化教育」を目指して来ました。

2014年の60周年を機に改革を進めた英語教育改革は、2015年から神奈川では先駆の中学校へのCLILの導入。2018年からは2年間UC.Davisとの提携で米国進学講座を展開。その後GLEの設置とIELTSのカリキュラム化。こうした英語教育の特徴で2025年2月にはidp IELTSから日本で4番目のIELTS教育推進校の認定に至りました。また、日米学術協会(JAAC)の統括するPDC Global Campus, JAPAN によるDDP(米国高校卒業資格併修プログラム)で学ぶ環境も整えました。当然ながら学習環境もICTでの世界基準を目指し、Google 社からはすでにGoogle実践校の認定を受けています。

2025年から26年にかけて、米国進学をしっかりサポートするJAACとNCNの協定を土台に米国への進学体制を整備します。50年後には人口が半減するとまで言われ始めた日本です。社会の未来を考え、教育が旧態依然でいいわけがありません。「技・人・国」の高度人材ビザよるインバウンド留学生の日本国内就職の急増、この現状から国内グローバル化を裏返して考えると、「未来の大人」には海外大学への直接の正規進学も、必要・不必要は個別の事柄でも、一つの大きな選択肢となります。

「教育を社会に繋ぎ、未来に結ぶ」。12年間で一つ一つ積み重ねるように整えてきた教育環境は大きくは目立ちませんが、関東学院の中の差別化でも「関六」の特色となりました。2026年からは、これまでの流れに立ちつつ新しい学校体制と教育態勢で邁進します。未来の大人、子どもたちの10年(7年)後に備える教育環境の強化を進めます。関東学院六浦中学校・高等学校を今年度もどうぞよろしくお願い申し上げます。

<校長のつぶやき(115)>社会を眺めて…『校長のつぶやき』の終章へ

◆世界の経済成長に取り残されて長く停滞感の漂っていた日本も、2026年は色々な変化を否応なしに迎える一年になる…そんな兆しを感じます。

◆感じるというのは、まず、2008年からの留学生受け入れ30万人計画の結果からです。単年度での留学者数がコロナ禍前の2019年に30万人を超えました。そしてコロナ禍を挟んで現在は、これまでの最高値で33万6708人(日本学生支援機構データ)となりました。そして、ご承知のように2024年には新たに留学生40万人計画が打ち出されました。すでにその計画の中でインドからの工学部学生の招聘が始まっています。

◆昨年2025年1月1日には日本国内での起業を促進(支援)する「外国人起業活動促進事業」の制度が、元旦の勢いに乗ったようにして?始まりました。それに伴う入国管理法の緩和により、日本国内で起業を考える外国の方々に「スタートアップ・ビザ」が導入されました。起業までの一定期間を準備期間として各自治体が支援しながら猶予するというビザです。これで、職業の各レベルとジャンルで緩和されてきた入国管理法の種々の改正も揃い踏みとなった…という様相です。

◆私はこの2025年までの動きを、学校内や説明会などでは勝手に「令和の開国」と呼んでいます。それは、子どもたちの未来(中学入学生は10年後、高校入学生は7年後)を考えれば、社会に出るときに持ち合わせるべき「力」の考え方に大きなシフト・チェンジが必要な変化の到来だからです。受験競争とは言いつつも護送船団方式の「内巻き競争」だった従来の考え方から、「自律の力を持たせる教育」へのチェンジが必要です。

◆◆「スタートアップ・ビザ」に切り替えが可能な既存の「経営管理ビザ」の国内保有者はすでに4万人を超えています。「外国人起業活動促進事業」の制度による多くの活性化か期待されました。が、開始から間もなく課題や問題が表出し始め10月から厳格化が進められています。滞在・居住する国で、母国政府からその国の情報の収集の義務を持つ方々も日本国内で多く活躍されていますから、明らかに適切かつ確かな入国管理法の見直しや整備が必要になります。

◆◆しかし、このことも関心が寄せられるところですが、注目すべきは、冒頭で触れた留学生の卒業後の進路です。2008年に提唱された「留学生受け入れ30万人計画」。留学生数30万人を超えた2019年は日本国内に就職する留学生はその36%でしたが、現在は留学生の53%が日本国内に就職し日本の社会を支える方々となっています。そして、53%のうちの82%、つまり留学生で就職する約44%が技術・人文知識・国際業務の分野で、いわゆる「技・人・国」ビザ、「高度人材」としての在留資格を取得しています。家族の帯同も実質的永住も可能になります。国内グローバル化は仕事の中だけではなくいよいよ社会全体で加速しますから、生き方の選択も迫ってきます。

◆◆もともと、「高度人材」の資格は、日本の経済活動の促進や技術開発など国益を目指すための認定資格とスタートしたはず…と記憶します。しかし、関係者の話を身近に聴いても、実感として緩やかに、なし崩し的に、日本への留学での修了者や卒業者にとって、魅力の自己実現への資格となってきているようです。一方でAIの浸透でホワイト・カラーの職域の変化も進み、従来の日本の教育が問われるでしょう。

◆◆日本国内の大学の半分がいまや定員割れをする中で、大学経営の下支えに留学生を受け入れる大学は地方の大学から増え始めて、最近は首都圏でも偏差値ランクにかかわらず(…と言えば多少語弊がありますが)大学の国際化のPRでの「売り」にもなりつつあります。そうした受入れやその後の就労の状況を「裏返し」で考えると、注目すべきはこの点、「留学生の卒業後の進路」と「理系ではなく、日本語しかできない、日本しか知らない日本の多くの若者の進路」の関係なのです。サンフランシスコの影絵を見ないとは言えません。

◆◆◆『校長のつぶやき』(2025年6月107号)で、2025年は後世から「令和の開国」と呼ばれる年になると書きました。様々な課題から、適切かつ確かな入国管理法の整備が必要になりますが、いまや半世紀後には人口の半減が言われる日本ですから、一方では間違いなく国内のグローバル化が止まらずに進むでしょう。また日本は、世界を相手にこれまでとは違う分野でも経済活動を活発化させていくことが必須ですから、日本のこれからの世代の子どもたち、「未来の大人」が新たな経済活動の中で、世界へ飛び出せる力、世界で通用する力、世界で働ける力、そして(けっして狭い意味でのナショナリズムや愛国主義からではなく)自分の故郷である母国を国内外からしっかりと支える力をつける教育を考えることがこれまでになく重要です。国内大学でどういう力をつけさせるのか、どういう生徒を海外の国際的な大学への進学にインスパイアすべきなのか。中等教育現場は、これまでのアカデミックスキルの質の高い教育と並行して、「内巻き」意識だけに巻き込まれない意識で、良い意味で汲々とするべきと思います。

◆◆◆アジアをはじめ世界の発展途上国の経済力が増し、その国々出身の若者たちのプレゼンスが日本国内での経済活動の中で大きくなって久しいです。私たち(中等教育関係者)は学校の中だけを眺めていて、のほほんと茹で蛙状態になり、発展する諸外国との教育での差異の現実を見ず、教育のシステムやカリキュラム、学び方(学習理論)自体の違いを意識してきませんでした。このことでの人材育成の後れが、文科省が唐突的に唱えだした「主体的な学び」の深いところに抱える課題と関係していると言えます。学校現場は、この後れをどのように取り戻すかが大きな教育の課題となっているはずです。

◆◆◆国内・国外を比較して対等に、選択するべき進路として考えることが難しい国、日本。その大きな原因の一つは、規制に縛られてきた英語教育のツケ、そのガラパゴス化と貧弱さです。OECDのPISAテストで優秀さを誇りながらも、国内外の大学を並べて選べない国はOECDの中では日本だけと言っても過言ではないでしょう。文科省がIB校を増やそうとしてきているのも、先述した「主体的な学び」同様に唐突に感じる人(教員も同様です)が多いのも、実は、進路選択の際の世界基準から見た、社会全体の病理の「狭窄」状態からの「自覚症状」でしょう。

◆◆◆六浦中・高はこの12年間、この大きな課題を、小さな学校ですが六浦中・高の学校自体の問題に照らし、実際の教育の目標に「学びを社会に繋ぎ、未来に結ぶ」を掲げてきました。生徒保護者の皆さんにも内向き・内巻きにならない教育観の重要性を語り、さまざまな学びの機会を設置してきました。進路指導の究極は、「世界を意識しながら自分の未来と自分が生きる未来を考える」ことにあり、大学選択では、「国内進学と海外進学とを「並列」・「対等」に考えることができる教育環境」が必要です。その環境づくりを進め、この12年で土台ができたと考えています。

◆◆◆◆小職は2026年3月31日を以って校長を退任となります。この『校長のつぶやき』も終章に向かいます。3期12年間の在任中、関東学院六浦中・高へのご支援に感謝を申し上げます。後任は、現宗教主任の伊藤多香子となります。引き続き関東学院六浦中・高をどうぞよろしくお願い申し上げます。

2026年1月1日
関東学院六浦中学校・高等学校
校長 黒畑 勝男