関東六浦の英語教育について

掲載日:2018.10.23

 2015年度入学の中学1年生から、CLIL(クリル:Content and Language Integrated Learning)で授業を行う新しい教授法で英語教育を行っています。現在は、ハードなCLILを目指したソフトなCLILを展開しています。今回は、本校の英語教育についてお知らせしたいと思います。

Q1:CLILとはどういう学習方法ですか?

A1:
 「内容と言語の統合型学習」と呼ばれる学習方法です。まず、使用するテキストは、全てのユニットが習得目標言語の「英語」で書かれていますが、挿入写真や絵図、また背景写真などが、英語で表現される事柄をビジュアル的に(non-verbal的に)サポートしています。生徒は、そのユニットの話題(内容)の中で取り上げられる事柄を適切なnon-verbal的なサポートと一緒に、記号としての「英語」で認識していきます。また、当然ながら教員の英語による説明で、またはティーム・ティーチングでの二人の教員による意図的な、時にはアドリブ的なダイアログで、話題となっている事柄についてのやり取りを聞いていきます。英語で聞き、読み、問われ、書き、話し、(写真や絵図を眺めながら)…を進めていきます。
 そのユニットの中で学習する話題は、「意味のある文脈」として構成されています。関連する映像も適宜に与えられ、話題に関する事柄とそれを述べる英語表現を、ライブな「語」や「表現」で学んでいきます。こうしていくうちに、単なる「文字記号」としての「英語」が意味を持つようになり、理解できる言語としての「英語」になっていきます。
 授業は限られた時間ですが、教員対一生徒、教員対全生徒、生徒対生徒による、話題の事柄に沿った目的のある相互のコミュニケーションも豊富です。触れた語彙や表現を自分の中にあるそれまでの英語力と合わせて再構成して発話する。そうして英語の発話力を高めていきます。このようにして、内容の理解と同時に英語そのものを必然的に習得してゆく。これが本校での学び方、ソフトなCLILです。
 初修の中学1年生は、1学期は特に音声とそれを理解するためのnon-verbal的なサポートで英語に触れていきます。教室では、教員は使用するテキストの他にICT環境をフル活用する本校オリジナル教材を組み合わせ、電子黒板を活用して授業を進めていきます。テキストの中のvisual-aid以外に習得をサポートする教材や映像教材が使われます。verbal + non-verbal の空間で、内容と言語の統合の作業が、個々の生徒の中で行われていきます。このnon-verbal的な要素が教室空間にふんだんにあることが特に大切で、これが本校の英語教育の特徴でもあります。

Q2:「学習する話題(内容)が意味のある文脈」とは、具体的にどういうことですか?

A2:
 まず、本校は教材として教科横断型の内容のテキストを用いています。Cengage Learning 社のテキスト教科書『TIME ZONES』です。英語を学びつつ総合的な学習をするための教材として活用しています。
 さて、「意味のある文脈」ですが、それはすなわち、一つの話題の中で理解させたい事柄と言葉が、両方の理解を深める上で合理的な関連性を持って、一連の連続する教材として構成されているということです。
 例えば、中学1年生で扱うテキストの中にある「家族」というユニットを見てみます。そのユニットでは、最初に、基本的なところで家族構成員の呼称表現の習得をします。それから構成員間の関係の表現方法の理解を目指します。そして個々の家族構成員に関する具体的な話題などを盛り込んだ表現が示され、習得ターゲットの「語・語句」を印象づけられながら基本的な単語や表現に触れさせられます。そして、課題となる新しい文法の習得も含めてアウトプットできるように練習が組まれている、という導入部から中盤の部分。
 後半の初めには自分の家族と親戚の家族の関係について述べる小さな記事もあり、immediate familyとextended familyという説明記事を通して、肉親や親族に関する表現や語彙を基本的な文の中で吸収していくという構成になっています。
 さらに付随するReading教材は、アメリカ・オハイオ州で開催される世界最大の「Twins Days Festival」に関する記事。そしてWriting教材は、そのユニットでそれまで接した語や表現を駆使しながら自分の家族についてe-mailを書いてみようというもの。
 そして、最後にVideo教材があります。ここでは、“Megafamily”というタイトルの映像です。映像を観る前に、内容の予測をさせる簡単な英単語による質問があります。内容に関する情報はテキストに載っている映像のstill pictureくらいであるにも関わらず、それでも観る前に映像内容を予測せよ、というものです。ここでは、(happy / small / big / fun / unusual)の中から想像して答えなさい、予想しなさい、という質問です。つまり、自分が何らかの意見を持ちながらVideoを観る。つまり何も考えずに受動的に観るのではなく、映像を観る前に、事前の予測で観点を持つことで、active に観るという手法です。テキストには、映像を観ている間に自分の選んだ想像の答えが内容に沿うものであったかどうかを検証する質問があります。それも判断しやすくするために、映像内容に関する具体的な質問が、True or False クイズとして与えられています。そして観た後には、生徒同士のtaskとして、大家族についての意見交換を英語で対話する言語活動があります。しかし、対話の糸口として対話内容の構成に役立つような誘導的な質問も与えられています。家族に関することを表現したり説明したりする言語材料や映像材料の効果的な組み合わせで、英語の語彙や表現と、そして内容を同時に学んでいくという工夫になっています。

Q3:『TIME ZONES』とはどのようなテキストですか?

A3:
 Q2に関係しますが、総合的な学習教材としても有効なテキストです。現代の社会や社会の問題を多面的に扱うCengage Learning 社の出版のテキストです。『TIME ZONES』 のトピックと内容は、National Geographic社が世界の話題の中から学習レベルに合わせて提供しています。各レッスンは、テキストでは学習領域と呼んで範疇化されています。時事問題・歴史・文化や生活・地理などの社会学系の話題や、気候・自然・地球環境・動植物・物理や化学などの自然科学系の話題を材料にしています。
 この『TIME ZONES』を用いる本校の授業は、教材のメリットを最大限に引き出す方法で展開していることが特色です。多くの学校では、英語の授業時間数の多くても半分がNativeの先生による別教材での英語(会話)授業という形態が主流ですが、本校の場合は、一貫しています。生徒はこの連続性の中で慣れ、習得を効果的にしています。中学1年生は週6時間の授業のうち5時間が、GET(TESOLを大学で専修した外国籍教員、本校通称Global English Teachers)とJET(日本人英語教員)のTT(Team-teaching)で、このテキストを中心教材として行っています。毎日の授業は、普通教室で行いますが、その話題に関連するインターネット上の映像資料(テキストに付随)も適宜に用いられます。(家庭でも附属の e-learning 教材でインターネットを通して授業の予習や復習ができます。)
 現在、『TIME ZONES』は、東京と神奈川で採用する学校が徐々に増えてきていますが、本校は教授法の改革と絡めてこのテキストの長所を最大限に引き出す工夫で教育を展開してきています。2015年からのスタートで4年目になります。もちろん、文部科学省の学習指導要領に鑑み、本校独自の学年別Can-Doリストを持ちつつの展開です。
 また、英語の授業に関連する重要なこととして、次のこともあります。
 2015年度からの教育改革として中学2,3年生の総合的学習の時間に、学校設定科目の「地球市民講座」を設置しました。これは、2020年以降の大学入試改革への対応も見込んでいます。本校独自のカリキュラムで探求型の学習を行っています。中学2年次は、調べ学習に基づくプレゼンテーションまでを目指す学習で協働の学習、中学3年次は、個人の調べ学習+プレゼンテーションを行います。これらの授業で得る知識など、「地球市民講座」での学習活動内容が間接的にも英語の学びに関係してきます。

Q4:初修の生徒に「英語嫌い」を生みませんか?

A4:
 英語は言葉です。慣れれば使えるようになるのが言葉です。
 日本の中学1年生は、夏休みまでに半分の生徒が英語を嫌いになるという話があります。小学校での英語教育が本格的に始まりますが、小学校でも中学1年生のようなことが起こらないかと危惧する声もあります。そもそも「英語」を教科教育の中に位置づけ、最後は高校入試、大学入試のための受験勉強で重要な教科とするところに英語教育の変質があります。本来の言語習得の学び方とは違った学び方になることで好き嫌いも生まれるのでしょう。受験で重要な教科にされた中での旧来の英語教育。そこからの脱却が必要なのです。
 英語は言葉です。母国語を操れる力があれば、英語も習得できる力を持っているわけです。ですから、教科ではなく実技です。自転車に乗る練習のように、最初は乗れなくても乗れるようになるのです。「慣れれば使えるようになる」環境にする。そして、今度はその「慣れれば…」を「慣れた」にしてゆくのが授業と学びの長さです。中1の時にボンと出来るようにならなくても、そのうちに「慣れて」いきます。慣れていけば伸びていきます。「英語は学ぶ『教科』」ではない。「慣れる実技」だと力説しています。ただし、気持ちが大事です。英語習得の必然性を実感する。そして実技として時間をかけて練習する。そして伸びる。以上の観点から中学1年生には、まずは楽しく学ぶ授業を心掛けています。
 授業は、楽しさを追求します。次第に聞き慣れるまで、ふんだんに英語のシャワーを浴びる。したがって、説明や質問、活動の指示まで全て自然の速さでの英語で行われます。中学1年生は、1学期の定期考査は中間考査も期末考査も筆記テストではなく、すべてリスニングのテストです。筆記は答えの「記号」を選択して書く作業だけです。
 しかし、残念ながら「英語嫌い」はいます。残念です。残念というのは、英語習得の必然性を実感できないということが残念です。ただ、本校内の比較で、従来の教授法での授業よりはるかに英語嫌いは減り、一部であると感じています。中学1年生には、校長室でお誕生日カードを校長から手渡しするのですが、生徒は私から必ず英語の学習についての感想を求められます。夏休みが明け秋になる頃には、「英検で頑張ります!」という自発的な答えも聞かれるようになります。「電車の中で、観光客の英語がすこしわかるようになってきました」などもありました。徐々に伸びる英語の力を多くが実感していると感じています。
 先述したように、中学1年生は週6時間の授業のうち5時間が、GET(TESOLを大学で専修した外国籍教員、本校通称Global English Teachers)とJET(日本人英語教員)のTT(Team-teaching)で学びます。残り1時間はJETが単独で行う授業で、その週で触れた文法や語法、単語の色々な意味を丁寧に復習していきます。つまずきをなくすためです。授業のシラバス、授業案は、IB教育の経験のあるGET教員が中心になって、JETとともに作成し、日本の子どもの特性を考慮しています。
 教室は、手前味噌ですが横浜市内でも先駆的な取り組みで、2015年に全教室に電子黒板型プロジェクターを設置。環境はほぼフルに活用されており、生徒の集中力も維持できるように工夫をしています。

Q5:生徒のレベルにあっていますか、大丈夫ですか?

A5:
 「六浦の生徒の平均学力の実態から、その方法での英語授業はうまくいっていますか?」という意味のご質問と理解します……が、答えは「大丈夫です」です。
 中学受験対策用の模擬試験データなどで本校の実態をご存じの上でのご質問と思いますが、「英検」に関して申し上げますと、2017年度末、実用英語技能検定(英検)の結果で3級以上を取得した生徒は、中1生で在籍生徒の16%、中2生で52%、中3生で68%となりました。また、準2級以上の取得者は、中1生で4%、中2生で15%、中3生で32%です。当面は中3生で準2級以上の取得を50%にしたいと思っています。(現在、英検受験に関しては特別な対策授業を展開しているわけではありません。)

 以上、質問にお答えしつつ、本校の英語教育についてお話しさせていただきました。
 新たなお知らせとしては、中学入試での英語入試(2016年度入学対象者から開始)を、2019年度入学者からは新たな形で実施します。
 また20年ぶりに再開した高校入試では2019年度からGLEコース・SELFプログラムも始まります。英語の力と同時に英語を通して様々なことを学び、海外進学も視野に入れて進路実現力を伸ばそうという新しい学びです。

関東学院六浦中学校・高等学校
校長 黒畑 勝男

GLEコース:Global Leaning through English「英語を通して世界を学ぶ」とする学習の流れの名称
SELFプログラム:Success and Empowerment in the Lingua Franca「世界共通言語を身に付けより高い自己実現を目指す」と呼ぶGLEコースの中のプログラムの名称