校長のつぶやき(52)「非日常との遭遇」

掲載日:2021.05.02

「六浦の特色の海外研修はコロナ禍で難しいですね」と、学院法人内のある方から“同情”の言葉をもらいました。確かにそうです。入職着任(2014年)以来、いつも「より若いうちに、感受性が『柔軟』なうちに、深く異文化を体験することが重要」と説いてきましたから…。

年齢が上がり自分の適性や興味関心の指向性が明確になり感受性も固まっていく前に、自分の中の気づかなかった様々な可能性の芽を自分自身で一つでも多く感じることはとても大事なことです。自分の中での当たり前を壊すようなシーンの中で突然、「いままでのこれは何だったんだろう?」と気づくこと。「非日常の中で気づかされる体験」が大切です。日常の中で気づかなかったことを客観視したり俯瞰(Bird’s- eye View)したりする体験は成長への大きな力となります。そのための本校の特色の一つ「選択制グローバル研修」を実施できないことはとても残念です。

しかし、工夫はしています。バーチャルですが旅行会社のon-line旅行への個人での参加を奨励しています。そこで「気づき」の場を持ってもらう。on-line上でも探求的に体験できるように工夫された旅行ができます。これもコロナが加速させた新しい生活様式の一つかもしれません。リアルな現地探訪ではないですが、本校のように「個別」での「主体的な学び」を「研修」の目的とする学校にとってはとてもうれしいon-lineの「旅行」がとても増えました。

学校は当然ながら、①何に焦点を当てていますか?(目的)②どのようなことを結論に得ようと考えていますか?(ねらい)③どうしてその旅行ですか?(必然性の理由) などを事前の課題とし、事後は自分が仮説やねらいとしていたことと現実に知って理解したこと、気づいたことを整理し論理的に文章化する。もちろんただ単に「旅行」プログラムに参加すればいいというのではなく、あくまでも個別化された「研修」です。「非日常の中で気づかされる体験」から次の自分の課題を発見すること、それで一回り成長することが目的です。

非日常の中での気づき…と考えると、実は、気づきの種は日常の中でも色々なところにあるはずです。自分にとっての非日常との遭遇、気づきは工夫次第。六浦中・高は、学びの中に遭遇を仕掛ける、これが学校の使命でもあると考え色々と実践する。不謹慎かもしれませんが、また悔しく辛いですが、このコロナ禍にいることだって非日常との遭遇かもしれません。

本校はICTでは先駆的で、この一年間ICTのさらなる積極的活用を実践しました。学校としてもこれまでの日常とは違う様々な経験をしました。特に、生徒の学びの個別・最適化を進められたと感じています。そして、その学びの個別・最適化が、これまでの日本のとても効率的で効果的であった教育の一方にある、「同調」を必要以上に求め無意識にそれを助長する心を増大させてきたという問題点を、まさに解決する手がかりだと感じています。個別化する学びの活動の中で、個々の生徒がそれぞれに非日常に遭遇することと、そこで得る経験と自信が、大きく変化し多様化するこれからの社会の中で必要な力の基、「主体性」を育てるのだと考えています。